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花崗岩のダイヤモンド「庵治石」
この度お客様から「庵治石」のお墓をご注文いただき、庵治石の産地、香川県牟礼へ視察・検品に行ってまいりました。現地の様子と庵治石についてご紹介いたします。
同業者(石材店)の間では、今までどんな国産の石を販売したことがあるか?などということが話題になります。外材が氾濫する市場において、国産の石を販売 もしくは取り扱う事は、石屋にとってとても大きなステータスを得ることになるのです。それは、石に対する知識や販売する能力を問われることでもあります。
「君は、何々石(国産石)を売った事あるかい?」
「はいあります。」
「そうか、それはならもう一人前(プロ)だね。」
業界ではそんな会話が普通に交わされます。よく考えると不思議な会話ですね。国産材には色々な意味で価格以上の価値があるのです。
それでは、国産の石にはどんな種類があるのでしょうか?国産の石といっても全国各地で採掘されています。関東では特に「小松石」が有名です。非常に味わい 深い石で天皇陵にも使用されています。中国材の数倍の値が付いて最高級墓石として扱われています。しかし、その小松石よりもさらに高価で「花崗岩のダイヤ モンド」と言われている石があります。それが「庵治石」なのです。石材関連の産業に従事する者であれば知らない人はない、飛び抜けて高価な石です。しか し、なぜ高価なのか、どういう石なのかをきちんと説明できる人はあまり居ません。
今回視察と検品を兼ねて本場庵治石の丁場(採石場)に行ってきましたので、ご紹介させて頂きます。

・庵治石の産地
庵治石は四国の北東部に位置する香川県の旧庵治町と旧牟礼町(現高松市)の境界付近に丁場があります。歴史も古く屋島の源平合戦 (源平屋島の戦い)の舞台となった場所です。那須与一の「扇の的」はあまりにも有名な話ですね。そんな源平の史跡が多く残っているところが庵治石の産地で す。そこは、瀬戸内式気候と言われる温暖な地域で庵治石の形成においても大きな影響をもたらしたといわれています。
・庵治石の形成について
墓石に使われている石は大きく分けて火山岩と深成岩からなっています。
火山岩・・・ 安山岩
深成岩・・・ 花崗岩、閃緑岩、斑レイ岩
*火山岩は火山の噴火に伴い流出したマグマが大気や海水等で急激に冷やされて形成された岩石で、結晶度は低く比較的軟らかい。
代表的なもの 小松石、山崎石
*深成岩は火山活動を中心とした激しい地殻変動が起き、そのとき地下深くでマグマが冷え固まった岩石で、比重により花崗岩、閃緑岩、斑レイ岩に分かれる。ゆっくりと固まったことで結晶度が高く硬い。
代表的なもの 真壁小目(花崗岩)、浮金石(斑レイ岩)
庵治石は地下深くで形成された深成岩で、今から2000年前に隆起し地表に現れたものです。白亜紀に形成された花崗岩の一種で、温暖な気候や海流はマグマをよりゆっくりと冷やし固めた為、庵治石の硬さやきめ細かさを作るのに役立ったと言われています。
・庵治石の特徴
○学術的なこと・・・
石英、長石を主成分とし、少量の雲母と角閃石を含むが、これら一つ一つの構成鉱物の結晶が極めて小さく結合が緻密。
*硬度は水晶と同じ7(モース硬度表)
○優れた点 ・・・
1,時間の経過による劣化の程度が少ない
2,約8000年前に形成された比較的新しい花崗岩の為硬い。
3,長石・石英・雲母などの鉱物の結合が緻密で強い。
4,吸水率が低い。(0.19%から0.2%)シミになり難く風化し難い。
5,変色しにくい。構成鉱物の黒雲母中の鉄分が極めて少ないため錆びない。
6,酸に強い。化学変化に強い(酸性雨にも表面が崩れにくい)
○斑(ふ)の話
庵 治石の良さを語る場合に欠かせないことの一つに「斑」が浮くという言葉があります。「斑」が浮くとは、研磨した石の表面に潤いを与えた様な斑模様が現れる 事で、二重のかすり模様のように見える状態のことです。源平合戦での平家を哀れんだ屋島の神仏が桜の花びらを舞い散らせ庵治石に写し出したという説もある そうです。
・種類
細目(こまめ)中目(ちゅうめ)に分類される
○細目 黒雲母が細やかに大量に入り青黒く、微妙な斑模様 濃淡が出る。(斑が浮く) 世界中の石材の中でも類が無い。
○中目 細目に比べ黒雲母の数が少なく白く見えるが、斑が浮く現象見られる。
・庵治石の丁場について
庵治石の丁場は個人の所有 地主が管理している。
代表的な丁場
○野山丁場 80%掘削済
○庵治山 80%掘削済
○大丁場 10%から15%掘削済(85%から90%残っている)
○中丁場
※特に大丁場は埋蔵量も多く特に良質な庵治石が産出した。元々は旧高松藩がこの山を管理し御用丁場としていた。高松城の改修工事にこの大丁場の石を切出して使っていた。後に旧高松藩の筆頭家老であった大久保家の所有となり現在も大久保氏の所有が続いている。

・丁場の状態
原石を採掘している丁場には、かさね(南北の亀裂)、二番肌(東西の亀裂)などと呼ばれるの断層が多数あります。庵治石の丁場は断 層によるキズが多い。それぞれのキズに沿った筋をよけ、良い部分を切出すため歩留まりは非常に悪い。また、加工する段階で原石では見えなかったキズが出て くる場合や石のムラ、色目合わせ(段層ごとに色目がバラバラで一つの丁場でも何種類にもなる)の難しさなど商品になるまでのリスクが高い。墓石、灯篭など 製品として使われる量は全体の採石量の約3%から5%程度です。
断層ごとに石目、色目が違うので一つの丁場で何種類もあることになる。そのため後から石目色目を合わせるのは非常に困難になります。
また、右下の写真の通りいくつもの「かさね」、「二番肌」と呼ばれる断層が走っています。見た目にも大きなキズが確認できます。さらに大割りされた原石を間近で見ると横に走る細かいキズも相当数確認できる。ここからキズの無い大材をとるのは容易でないことが解ります。

・丁場の維持
丁場を維持してゆくには県の条例に基づく植林、埋め戻し、防火用貯水池や砂防ダムの管理等莫大な費用が掛かります。(地主負担)そ のため、採石業者(大丁場10業者)は採石する権利を得る為に丁場の管理者である地主に年貢(丁場使用料)を支払うのです。実際には採掘しなくても、売り 物にならない石であっても年貢は払わなければならない。また、地主の許可の他に採石法に基づいて県の許可が必要となり計画的かつ安全に採掘を進めなくては ならない。ですから、年貢を払って許可をもらっても良い石が採れないこともある。場合によっては、数年間売り物にならない様な石を採掘しなければならない こともありうる。良い石が取れないということは当然利益が出ないということであるが、投資は続けなければならない。そういう意味でも事業リスクはかなり高 い。このこともコストの高い原因の一つになっています。
・庵治石の価格が高い理由
1,丁場の状態
かさね、二番肌と呼ばれる断層が非常に多く、キズを避けることが困難な為、全体の採掘量の3%~5%しか製品にならない。厳選された庵治石だけが墓石として使用される。
2,加工時のリスク
原石時に極力錆のある部分や傷の部分を省いてゆくが切削時に中からキズや錆、黒玉、白玉などが出てくる場合が多い。当然やり直しとなる
3,色あわせのリスク
断層ごとに色目石目が違うので合わせるのが困難。原石や切削時ある程度予想するが、研磨すると印象変わってしまう石がある。
4,丁場の維持
丁場の維持管理費用、採掘権等の費用が非常に掛かる。
主に以上の理由が挙げられます。
・ブランドとしての庵治石
庵治を支えるの石屋さん。
庵 治産地の石材関連業者は狭い地域に密集している上に、技術を受け継ぐ為先祖代々受け継がれてきた石屋・親子兄弟などの師弟関係の繋がりが深い石屋が多い。 いわゆる「よそ者」が新規参入することが非常に難しい。誰でもが採石業者から直接庵治石を購入することが出来ないので、ルートもはっきりし、乱売、粗悪品 が出回ることが無い。だから、「天下の銘石庵治石」というブランドが確立したのだという。
厳選された庵治石を扱える選ばれた石屋としての自負を 感じました。確かに、今回何人かの職人さんと話をする機会がありましたが皆さん庵治石に対する想いが強く感じられ仕事中にも拘らず手を休め丁寧に説明して 下さいました。それだけ自分たちの仕事に自信を持ちプライドを持っているのだと感じました。
・キズ検品
確かな腕を持った職人さんはどんな小さなキズさえ見逃さない。普通、一般の人では判らないキズを製品として出さないという責任感を強く感じました。
右下の写真はキズによる検品で没となった品物です。説明用に保管されていました。どれがキズなのか探せないほどの状態の物です。

・ルートの重要性
庵治石を支える石屋さんのところで述べましたが、採石業者が誰にでも石を売るわけではありません。また、採石業者がどんな丁場 にも入れるわけではありません。庵治石のそれぞれの業者は丁場、採石業者、加工業者が一つの繋がりでルートが完全に決まって他のルートの仕事は出来ないの だそうです。そのため、庵治石を販売するには良いルートの確保が重要となってくるのです。採石業者が現在採っている場所の石が良くなかった場合、結果的に そのルートから良い製品が出ないということになるからです。ルートが決まっていることは先に述べたとおり、乱売、粗悪品を阻止し、ブランドを守るために必 要なルールです。ですから、より正確な情報を持っている業者、特別な権利を持つ業者、原石の在庫が確保できている業者等とルートを持つことは庵治石を販売 するためにとても重要なことなのです。幸い私共はそのルートを確保しています。
・最後に庵治石について
庵治石は硬く美しい石 である。また反面難しい石でもある。その石を丁寧に加工し研磨する。斑がきれいに出るように熱を与えない様研磨する。そのような良くするための工夫は代々 受け継がれてきた。「天下の銘石 庵治石」は、その美しさだけで無く、それを支える人々の心意気によって高級ブランドになったのだとつくづく思いました。























